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理事長所信
【はじめに】
2010年2月、私は鹿児島県南九州市知覧町にある知覧特攻平和会館を訪れました。新卒で入社した証券会社に勤務して2年目が終わろうとしている頃、リーマンショックからの景気低迷と激務でとても辛い日々を過ごしていたときでした。かつての大戦時に知覧基地は本土最南端の陸軍特攻基地となり、400名を超える若者が戦地へと出撃していきました。施設には特攻隊員に関連するものの展示がされており、当時24歳であった私と同年代もしくはそれより若い隊員の遺書や家族への手紙を読みました。愛する家族や故郷、祖国を護るために、前途ある若者が自分の命を犠牲にして戦った我が国の歴史に触れ、涙が止まりませんでした。
今、私が当たり前のように享受しているものが、多くの日本人の尊い犠牲や絶え間ない努力によって成り立っていることを実感しました。また、これまで何不自由なく育ててくれた両親への感謝や故郷への愛情を強くする体験となりました。
祖国である日本をより良くして次世代に繋いでいきたい。この想いは私がJCをやる上での根底にありますし、明るい豊かな社会の実現と同じ方向を向いていると信じています。
2025年は終戦から80年を迎える節目の年になります。「新日本の再建は我々青年の仕事である」という戦後の焼け野原からの再建を志して興った青年会議所運動の創始の言葉の重みを感じずにはいられません。
1958年に全国で137番目の青年会議所として設立された玉野青年会議所はその想いを受け継ぎ、「修練・奉仕・友情」の三信条を掲げ、明るい豊かな社会の実現を目指して、地域の抱える課題を事業・運動を通じて解決してきました。卒業した先輩方は、地域を牽引するリーダーとして存在感を発揮され、JCで培ったスキルや人脈により、地域の社会や経済に多大な貢献をされました。その信頼と実績があるからこそ、我々現役メンバーは、貴重な開発と成長の機会を享受することができています。私たちは「JCしかない時代」から「JCもある時代」を生きています。人々の価値観も多様化し、タイムパフォーマンスやコストパフォーマンスが重視される風潮があります。このような時代だからこそ、JCとメンバー個人の存在意義(Purpose)を重ね合わせ、同じ方向を向いて活動してまいります。20歳から40歳の人生における貴重な時間だからこそ、家族や会社、地域に向けて胸を張ってJC活動をしていると言えるように、そして玉野JCに所属していることが誇りに思えるような団体にしていきます。
【未来を担う人財の育成と組織力の向上】
リスキリング(学びなおし)による人的資本の最大化が求められる時代の中で、大人の学び舎である青年会議所の価値はさらに高まっていくと思います。しかし、JCは入会しただけで成長が約束されるわけでも、社会的なステータスが保証されるわけでもありません。JCに入会した理由はひとそれぞれです。仕事や家庭の状況でJCに割ける時間も個人差があるのが実情です。だからこそ、メンバー一人ひとりが人生の目的としっかり向き合い、目指すべきものとJCの理念や存在意義が同じ方向を向いているのが理想です。自分の人生を豊かにするためにメンバーにはJCを存分に利用してほしいと思います。JCには4つの機会が存在します。個人の機会、地域の機会、国際の機会、ビジネスの機会です。この機会とは偶然にめぐってきたり、ラッキーで手にしたりするものではありません。それを掴めるかどうかはそれぞれの積極性が重要となります。成長の機会を積極的に掴みにいくことができる人財を育成してまいります。
会員の減少も深刻な課題の一つです。拡大運動は継続していかなければ組織の弱体化に繋がります。JCの魅力を伝えるためには、JCで得られる体験を積み重ねることとJCの理念や基礎知識を体系的に学ぶ研修の両方が重要です。体験と研修の両輪で活動していくことで、JCをより深く理解することができ、モチベーションが高まり、積極的にJC活動に取り組むようになります。そこで得られた自己成長やメリットによって、自信を持って会員拡大に取り組むことができます。メンバー一人ひとりがJCをやって得られたメリットを自分の経験を通じて伝え、共感を得ることができれば、会員の拡大に繋がります。例会事業や対外事業を有効活用しながら、JCを体感してもらう機会を増やすことで、玉野JCの運動や活動に対しての共感の輪を広げていきましょう。
【運動の効果を最大化する時代に即した組織運営】
テクノロジーの進歩や人々の価値観の変化により、青年会議所を取り巻く環境は大きく変化しています。単年度制で運営される組織だからこそ、安易な前例踏襲に流されるのではなく、当事者意識をもって、時代に適応していく必要があります。メンバーからの会費や貴重な時間を使っているからこそ、一つの行動に対して意味や目的を理解しないといけません。誇りを持って継続していかないといけないもの、時代に適応するために勇気をもって見直すものを見極めることが重要です。多様な人財が集う青年会議所だからこそ、メンバーが存分にJC活動に取り組めるような環境を整えてまいります。
広報活動についても近年力を入れてまいりました。広報活動や組織のブランディングは各委員会が展開する運動の効果を最大化するためには必要不可欠です。大量の情報が溢れる今、ホームページ、SNS、広報誌を活用し、玉野青年会議所の運動を必要とする人に適切に届けることで、玉野青年会議所の運動が社会により良い影響を与えていきます。
【まちの未来を創る運動の推進】
2024年に人口戦略会議が公表した消滅可能性都市に玉野市は含まれています。人口減少による税収不足で公共サービスが不足し、20代から30代の転出者が多く、住み続けたいと考える市民の割合もこの世代の比率が最も低いというデータが出ています。地元経営者の高齢化による事業承継難、地域経済の低迷、地域の価値や魅力を十分に収益化出来ていないことが原因としてあげられます。地域の価値や魅力によって、その地域が潤い、地域の誇りとなることや働き方が多様化する現代において、安定して働き続けたいと思える企業が増え、イノベーションが生まれやすい経済環境が整備されることが重要です。そうすることで、玉野に住み続けたい、働き続けたいという人は増えていき、経済活動は活発になり、税収増も見込めます。
また、今後発生が予想される南海トラフ巨大地震や気候変動に伴う水害についても、地域として十分な対策を講じる必要があります。玉野JCとしては、2022年に玉野市社会福祉協議会と災害ネットワーク協定を締結したり、例会事業で防災や減災に関する専門家、有識者をお招きしたりしてきました。今こそ、有識者、専門家、各種関連団体との連携を加速させ、災害が起きた場合の迅速な支援の展開に繋げるとともに、高い防災意識を持って行動できるリーダーを育成し、地域の防災意識を向上させることで災害に強いまちづくりに寄与します。
港フェスティバルや玉野まつり、玉野青年会議所が立ち上げた花火大会は、地元住民から愛され、地域の誇りとして定着しています。他団体と連携しながら持続可能な形を模索し、玉野のまちにとってベストな形で、これからも地域の誇りであり続けるように次世代へと継承していきます。
【絆を深める岡山ブロック大会】
今年は岡山ブロック大会を玉野青年会議所が主管させていただきます。昨年より準備委員会を立ち上げて準備を進めてまいりました。岡山ブロック協議会の志を同じくする者同士が、さらなる友情を育み、JC運動をさらに邁進していく気概を高められるようなブロック大会を実施してまいります。現役会員、特別会員にとっても多くの出会いや成長の機会をいただき、強い思い入れがあるのが岡山ブロック協議会です。岡山ブロック大会の主管というこの貴重な機会に玉野JC一丸となって取り組み、多くの時間を共有することで、メンバーの成長と組織力の向上に繋げてまいります。玉野JCのメンバー一人ひとりが輝き、その光で岡山ブロック協議会を照らします。玉野JCだからこそできる岡山ブロック大会を通じて、まちも人も成長し、メンバー一人ひとりがJAYCEEであることを誇りに思えるような1年にしていきます。
【結びに】
玉野からJCが無くなってしまったことを想像してみてください。玉野の若者は日本全国、世界各国の志あるメンバーと出会う機会を失い、新しいビジネスチャンスを失うかもしれません。玉野の若者は地域課題の解決と向き合う機会を失い、地方の衰退を招くかもしれません。玉野の若者はJCが提供する指導力開発、人間力開発の機会を失い、地域を牽引するような優れたリーダーが減少し、地域の勢いは失われるかもしれません。玉野の若者は国際交流、国際貢献の機会を失い、玉野からグローバルで活躍する人財が輩出されないかもしれません。地域にJCが無いことは間違いなく地域の損失です。
そのような未来が訪れないためにも、先輩方から受け継いだ誇りを胸に運動を展開していくことは大切ですが、時代に適応し組織をアップデートしていくことも求められています。最も重要なことは、メンバー一人ひとりがJCを通じて、将来への希望や自己成長への期待を描けるような団体にしていくことです。諸先輩方から受け継がれた誇りを胸に、変化を恐れることなく、玉野JCの運動を未来へと進めていきましょう。
特別会員、関係諸団体の皆様におかれましては、本年度も玉野青年会議所に対しまして格別のご支援とご協力を賜りますようお願い申し上げます。
一般社団法人玉野青年 会議所
第68代理事長
立花 峻
基本方針
1. 未来を担う人財の育成と組織力の向上
2. 運動の効果を最大化する時代に即した組織運営
3. まちの未来を創る運動の推進
4. 絆を深める岡山ブロック大会